EC-CUBE DAY 2015 に 参加してきました #EC_CUBE
個人的に、10月から業種を金融からECに変更することもあり、ECの現状がどうなっているのか、この大きなカンファレンスに参加すれば何か得られると思い、申し込んでみました。
私は大阪に住んでいるので、東京開催のイベントは毎回面白そうで、非常にうらやましくも思いつつも、なかなか参加できない現状がありましたが、今回はどうしても参加したかったので、夜行バスで往復するという強行スケジュールで挑みました。(おかげで交通費は1万円以内で収まりました(笑))
店頭の力を活かすオムニチャネルとは。「24時間パルコ」の考えるECの未来
株式会社パルコ・シティ シニア・コンサルタントである唐笠氏から、ショッピングセンターである「パルコ」の「現在の取り組み」と「未来」についてのお話でした。
なお、パルコ・シティは母体のパルコのEC事業を営む傍ら、それらに絡むWebコンサルもやっているそうで、EC支援の活動が評価されて2014年には「ネット&リアル相互貢献グランプリ」にて「優秀支援企業賞」を受賞しているそうです。私にはあまり価値がよくわからなかったのですが、http://ecken.jp/?p=2298 が参考になりそうです。
オムニチャネルとは
EC業界にいるとこの言葉を避けて通ることはもうできない世の中になったのではないでしょうか。このセッション以外でも誰もが1度は口に出す言葉であり、じゃぁ具体的になにをするんだというところですが、ポイントは以下の通りです。
- リアル店舗+EC店舗を連動させて、今以上に顧客の囲い込みを行う
- 囲い込みも行いつつ、事業全体のスケールを拡大させていく
- ブランドや店舗のファンになってもらい、どのチャネルでも購入できる
- 最終的にはこれらの購買行動分析を行い、さらなる発展を目指す
とにかく、今までは店舗は店舗で売ればいいし、ECはECで売ればよかったものをお互いがそれらの特性を生かしながら、1つの大きな「店舗」として運営していこうじゃないかという、結構大きなストーリーが背景にあるようでした。
オムニチャネルを取り巻く背景
その背景には、購買層の購入スタイルが変わってきたことがあげられるようで、唐笠氏は特に「スマホの普及」に焦点を合わせて、以下の大まかな分析からオムニチャネルの推進を掲げているように見えました。
- 普及台数:6800万台
- メディアの接触時間がTVに次いで2位である。
- パルコのスマホ閲覧率が79%に達している
カエルパルコのリリース
今までのECのスタイルを脱却し、新しいECのスタイルを作っていこうと考えられ作られたサービスが「カエルパルコ」となります。
それまで、2015年1月までは、パルコ本部がやり、本部に売り上げがあがる事業として出店型のECモールを中心に展開してきましたが、この形では限界が近づいていましたと。
例として、店舗との接点が希薄になってしまい、各店舗がもつ、販売力・接客力などの戦略を本店が横取りするような形になってしまったりと、いろいろ不都合な面があり、それを見ぬふりするのはできなくなってきましたよと。(売り上げも高止まりするようですね)
そこで、店舗側が運営できるように「ブログ」をベースに、「店舗に売り上げが立つEC」を推進していこうという流れが生まれ、それが「カエルパルコ」として「新しいECの形」としてリリースしましたよと。
特徴としては以下のポイントがあります。
- 店舗スタッフが「ブログ」を通じて「商品」を独自発信できる
- 在庫のコントロールを店舗が行い「取り置き」や「発送」を行う
- スタッフの裁量がそのまま売り上げにつながる
聞いているだけでは本当にいいこと尽くしじゃないかと思いますが、もちろんこれができる「土壌」を提供するために、既にサービスとして提供されている「STORES.JP」をベースにパルコ独自で拡張を行ったようです。
- 商品登録機能の拡張
- カエルパルコ連携投稿などのカスタマイズ
- 取り置き機能・ダイレクト発送の選択肢の追加
- 店舗情報の集積・管理機能
手ごたえについて
これらの土壌を提供することで以下のような手ごたえを感じているようです。
- 店頭によってはばらつきはあるがWeb注文だけで月100万円の売上達成
- 他都道府県からの注文、営業時間外の注文が増加
- 実際にWebで買ったお客様にファンになってもらえるような施策を実施できる
例:購入者にメッセージやノベルティなどを店舗側がサービスするなど - 店舗に裁量を持たせることで、倉庫・物流・仕入などのハードルを低くできる
特にアパレルなんかは商品の入れ替えが激しそうなイメージを持っていますので、店舗に裁量を持たせるメリットを最大限に享受できるような業界なのかなと感じます。
パルコが考えるECの未来
そして、最後にこれからのECの未来についてのお話がありました。冒頭でも書きましたが、スマホはもう日常に溶け込みすぎているので、この媒体を使った戦略は避けて通れないようです。
パルコで提供しているスマホアプリ「POCKETPARCO」の紹介と、それを基軸にした新しい購入スタイルの提案がありました。
- スマホ独自の文化である、後で見る行為を意識した「クリップ機能」の提供
- ポイントカードとの連動をすることで購入時の煩わしさの解消
- 独自のコインシステムを提供し購買欲を上げていく
- チェックイン機能の追加によりどの地域が活性化しているかの分析
- Beaconと連動し人の流れをデータ化し店舗設計に生かす
このうち、パルコ以外でも「無印」や「LOFT」などのアプリで既に実施されしているものもありますが、やはり最後の「Beaconとの連動」は、建物を所有しているところには非常に有利ではないでしょうか。
今までその道のプロフェッショナルがやっていたような、店舗設計なんかも、ビッグデータに基づいて可視化されたものを利用できるのもあってすごく未来を感じました。
eコマース革命から激動の2年。Yahoo!ショッピングの今後の戦略とは!
次に、Yahoo!ショッピング。ショッピングカンパニー営業本部本部長の畑中氏によるEコマース革命のこれからの戦略についてのお話を聞きました。
Yahoo!ショッピングというと、ガイアの夜明けなどで大きく取り上げられもしましたが、とにかく「なんでも無料」というイメージが本当に定着しましたよね。大きなところでは以下があげられます。
- 初期費用:約20000円 → 無料
- 固定費:19800円~49800円 → 無料
- ロイヤリティ:売上応じて4% → 無料
- 自社サイト送客:無料(自由)
- メール送信:無料(自由)
無料にしてほんと大丈夫かと思われがちですが、実はこういう「戦略」なんですよね。赤字でもいいからとにかく業界をどんどん活性化させていこうとしていて、母体の財政状況が強みになっているなぁと感じます。
伸びしろはまだまだあるらしく、市場全体で300兆円までは拡大すると見込んでいるようです。直近の2025年には60兆円になる予定だそうです。
革命から2年後のいま
某R社の実績も交えながら、順調に成長していますよと。
- 出店数:2万 から 13.4万
- 商品数:210%成長
- 流通総額成長率:123%
要因としてはフロントでは以下のポイントがありますよと。
- 無料による価格破壊促進(どの店よりも安くできる)
- Tポイントの大量投下(5倍・8倍はあたりまえ)
- ショッピングクーポン(発行数日本一)
- 「お買いものまとめ」というキュレーションサービス
- 優良なコマースパートナーを積極的に店舗に紹介
バックエンドでは(私の興味ある部分)では以下のポイントがありますよと。
そしてこれから
特に、母体であるソフトバンクとの密な連携は目を離せないかなと。ID・個人情報・決済情報の入力を取っ払って、キャリア決済できる仕組みを取り入れることで、シームレスにお買いものができるようなこともこれからやるようです。
また、アリババ…有名ですよね。越境ECを支援し、ショップを海外にもどんどん展開していきますよと。本当にやることがいちいち大きいです(笑)
通販業界こそ、LINE@(ラインアット) ~LINEでビジネスしよう~
私、寿司好きでございまして、最近近所の「かっぱ寿司」が「LINE@」を利用していることを知り、早速友達になった次第でございますが、LINEを使ったビジネスって広がりを見せてきてますよね。
特にLINEってどれくらいの規模で使われているか気になるところで
- 世界は230カ国で利用
- 台湾であれば2300万人中1700万人が使っている
- 日本人口の45%が加入、アクティブユーザー率が63.6%
- 30代以上の利用率:60%
- 20代の利用率:26.7%
- 10代の利用率:12.9%
この数字をバッグにいろいろ展開していますと。
- LINE MALL:CtoC形式のサービス
- LINE WOW:デリバリー系サービス
- LINE PAY:各LINEサービスで利用できる決済サービス
LINE様もやはりPCとスマホのすみ分けは非常に意識されていて、利用傾向についても日々分析されているようです。
- スマホは常に持ち歩き、見たものをお気に入り登録する傾向
- PCはほしいものが決まっているときに利用、スマホはだらだら利用
- 20代以下の若年層はTVよりもスマホ接触率が高くなってきている
- PCは2ページくらいで離脱するが、スマホは5ページくらいまでいける
- 普段使いするアプリは9個・平均は月27個利用
そもそもPCってある程度「時間」や「場所」の制約があって、行動パターンが限られてくると思う(家・会社・ネットカフェ)のですが、スマホって本当にどこでもつながっている(電車・お風呂・ベッド)ので、指向が別れてくるんだろうなぁと感じます。
LINE@とは
このあたりで既におなかいっぱいだったので、LINE@については話半分で聞いておりましたが、FaceBook・mixiなどの趣味趣向を軸にしたオープンなSNSから、これからはクローズド・ファミリーなどのくくりでSNSを楽しむ時代になってきまてますよ。なのでLINE@どうですかというところみたいです。
- 初期費用・月額:無料(リッチコンテンツは有料)
- LINE@に登録されたお客様に対して1対1のサービスを提供できる
- 管理画面は夫婦2人でやってる小料理屋でも触れるくらいシンプル
- 自動メッセージ配信機能がついてます
- 統計ツールだってあります(クーポン利用数・友達数・ブロック数など)
- 特にLINEの強みである「プッシュ性」を最大限に生かせます
友人が居酒屋を経営していたりするのですが、ぐるなびとかWebサイトとか、私がやっても結構めんどくさかったので、おのずと店舗側ではだいたい定着しないんですが、「LINE@」であれば普段のやり取りで使っている延長上でも利用できそうですし、特にそういう人たちに薦めたいかなと思いました。
EC-CUBE3をなぜ作ったのか。ロックオンが見る「ECの未来」
いよいよ、このカンファレンスを開いた「EC-CUBE」を作っている株式会社ロックオンの岩田氏のお話。もともと(今も?)技術者なのか、今まで聞いてきた感じよりも技術よりの話でした。
EC-CUBEができるまで
もともとOSS(Linux)に感銘を受け、OSSの可能性を感じていた岩田氏。設立当初からECの案件の需要が多かったものの、その当時は海外製のもののカスタマイズが多くて実用に耐えないものが多かったと。
特に、海外製のECパッケージあたりは、自分もEC-CUBEがリリースされたあたりにECを一時期だけかじっていた時期があって、海外製のパッケージを導入するんだけど、カートの仕様がカナダに合わせてあってとか、そもそものアーキテクチャも古臭かったのもあって、日本国内で運営するのにすごく苦労した記憶がありました。
それからASPが台頭してきて、ある程度ECのハードルは低くなってきたものの、カスタマイズ性があまりなくて、やりたいことがやれないという時期もあったそうで(それもわかります)、こうなったら自ら作っていくかというところで、EC-CUBEの原型ができたようです。
コンセプトとしては「ECサイトに色を」
- 構築の容易さ:ASP以上にする
- カスタマイズ性:開発型以上にする
という2点を軸にやってきましたと。でも結局、開発型って「自己責任」である世界観があるので、やはり簡単には浸透していかない。そこで
- 開発やサポートなどのコミュニティの整備
- ホスティングパートナー制度(レンタルサーバーを提供するパートナー)
- インテグレートパートナー制度(カスタマイズできる人をパートナー)
- アライアンスパートナー(決済・物流・広告などを支援できるパートナー)
のような施策を打つことで、導入の敷居を下げていきましょうと。そのおかげで今では、ダウンロード数で170万。推定店舗数は2万を超え、事例も3000社以上になっているそうです。
なぜEC-CUBE3が生まれたのか
今回のメインテーマであるEC-CUBE「3」のお話ですが、ここに至るまでさまざまな歴史があったようですが、EC業界はEC単体の構築だけでは済まない時代が到来していますと。オムニチャネル・越境EC・IoTなど、さまざまなチャネルを絡めていこうとすると、現状の「2」ではもう限界が近づいていましたと。
そこで「3」では3つの問題点を改善・拡張したそうです。
- プラグイン同士の競合について
EC-CUBEのコアな部分を「2」よりも小さくしてサービスを切り出し
プラグインを開発を容易にし「つながりやすい」構造にした - セキュリティ面の課題にについて
これまでオレオレフレームワークだったが「Symfony」を導入
テスト工数の削減と拡張性を確保しつつセキュリティにも強くなった - 拡張性の課題について
WEB中心の構造がゆえにEコマースだけしか考えられてなかったが
様々なAPIによりスマホアプリなどに対応するなど拡張性を重視した
このあたりは、最近の流行だなと感じるところと、特に今までWEBだけで済んでいたものが、いろいろなデバイスにより選択肢が増えたことによる影響も非常に大きく受けているのかなと思いました。
そしてこれから
これからの展望としては以下を想定しているそうです。
アーキテクチャさえ盤石であれば、本当にやりたいことが一気に増えていくイメージはあります。あとは技術的負債をできるだけ溜めていかないように、日々のメンテナンスを怠らないことが重要かな~としみじみ思いました。
1つのタグでコンバージョンを最適化!欧米主要ECサイトで利用される離脱防止策について
最後に、Ve interactive の お話。イギリスの会社だそうで、日本に来て1年くらいでまだ知名度はこれからといったところらしいです。主に「離脱防止策」についてのサービスを提供していますよと。
離脱について
ECに限らずこの「離脱」って言葉、Webサイト運営者にとってはすごく耳の痛い言葉だと思います。そのためにGoogle Analyticsとか使って、訪問者がどういう動きをするのかなどを日々分析している方は多いかと思います。
私も、製品開発をやっているときに、販売チャネルを広げるために専用Webサイトの構築をしたことがありますが、ほんと毎日が戦いでした。デザインであればボタンの色を変えるだけでもアクセスが変わるし、魅力的な文章を書くためのライティング技術、画像1つ1つの魅せ方とか…素人ながらに非常に苦労した経験があります。
ECでは、とにかくコンバージョン(購入)をとにかく上げていくために、できる限りシンプルなカート設計を行っていると思うのですが、ある程度限界があるように思ってまして、「入力がめんどくさそう」「なんかセキュリティ的に」「対応しているカードがない」など、理由はさまざまですがとにかく「離脱」は切っても切り離せない問題であると思います。
そこで、Ve Interactive ですよと…。
おいしい3つの特徴
そこで、Ve Interactive は 利用してくれる人に3つの特徴を用意しています。
- 完全成果報酬型:初期導入・運用費用は一切要りません。
コンバージョン(購入)が発生したときだけお金もらいますよと。
クリエイティブ(画像とかそういうのね)制作は全部Veがやります - 導入はJSタグを入れるだけなので非常に簡単ですよ。
- ユーザーの行動に合わせた表示やソリューションを提供しますよ。
なるほど、クリエイティブ制作までやってくれて、JS埋め込むだけで、ユーザーの行動に応じて効果的な離脱防止策を打ってくれる…まさに夢のようだ…。
主な仕掛けはこんな感じ
実際、タグ埋め込んで何やっているのか気になりますが、大まかには以下の2点。
- メールアドレスを入力したと同時に一時取得してリマインドメールを送付
具体的には45分後にメールを送るしくみらしい(法律的にはOKらしい)
収集したメールアドレスデータは時期をみて完全消去されるしくみ
勝手に取得ではなくてポップアップで許可を得るタイプもある - サイトを離れるとクリエイティブを表示
タブを閉じたり、他サイトに遷移したりするとPOPUP表示
一定時間放置していた場合にPOPUP表示
個人的にはどっちも日本でウケるのかどうかは…って思ったりするところです。なにせ特別なことしていないのにメール来たりPOPUPでたりするのって怖いじゃないですか。
うちの嫁さんなんかは、よくネットで買い物しますが、下手したら(=使いどころを間違えると)「一生離脱」とか考えられますので、本当にコンバージョンが上がるのか非常に気になるところです。
参考数値実績
ちなみに参考数値実績は以下のようになっているようです。
- メール:開封率62%(コンバージョン率+4.5%)
- クリエイティブ:コンバージョン率+2.6%(配置するページによっては15%)
このパーセンテージの意味合いがまだわからないので評価のしようがないです…。
さいごに
とにかく1日で詰め込めるだけ詰め込んだ感じはしました。O2Oとか越境ECの話をもっと聞けたら嬉しいなと思っていましたが、参加できるセッションが限られていたため残念に思いますが、おおむね今後のECの方向性は見えてきたかなと感じました。
つい先日「PAY.JP | ペイ ドット ジェーピー」がビジネスローンチされましたが「決済サービス」ですね。LINE PAY・PayPalなども有名ですが、このあたりのインフラがもっと整ってくれれば、ECもさらに盛り上がってくるのかなと思います。
特に「スマホ」の動向には常にチェックする必要があると思いました。上記のような決済もそうですが、あらゆるサービスを横串で利用しながら、購入に至るまでの行動を分析して、いかにコンバージョン率を上げていくかというところで、研究を進めていき、最適なルートを見いだせた時、EC業界は今以上に急速に拡大していくのだろうと思います。
あと、個人的ですが「#cart」というサービスがすごく面白そうだったので紹介します。
有名人が商品を紹介してくれるんです。昔「ペニオク」で有名人が叩かれまくった事件がありましたが、#cartはそういった感じではなく、有名人というコンテキストを利用しつつも、あくまでも「紹介」にとどめているところとあたりがうまいなぁと思いました。